トー横で繰り返される「搾取」の連鎖――向精神薬転売事件が浮き彫りにした現実

また繰り返されたトー横の事件

東京・歌舞伎町の「トー横」を舞台に、向精神薬の転売や少女への売春のそそのかしが行われていた事件が報じられました。

報道によれば、24歳の男は、少女たちに病気を装って医療機関を受診させ、処方された向精神薬を回収して転売していました。さらに、薬を購入するお金がなくなった少女たちに対して「体を売って稼げばいい」と売春を促していたとされています。

この事件は単なる薬物事件ではありません。弱い立場に置かれた若者を巧みに支配し、依存と搾取を繰り返す構造が見えてきます。

「依存」が支配の道具になる

向精神薬は本来、精神疾患や睡眠障害などの治療に必要な医薬品です。

しかし、適切な医療管理から離れれば、依存やオーバードーズ(OD)の危険があります。

今回の事件では、少女たちは薬物依存状態へと追い込まれ、その依存を利用されていたとみられています。

依存状態になると、正常な判断力を保つことが難しくなります。

「薬が欲しい。」

その気持ちが最優先となり、お金がなくなると犯罪や売春など、本来であれば選ばなかった行動を取ってしまうことがあります。

依存を作り出し、それを利用して利益を得る。

もし報道内容が事実であれば、極めて悪質な搾取と言えるでしょう。

SNSの「人気者」が持つ影響力

今回の容疑者はSNSで「いのっち」と名乗り、5万人以上のフォロワーを抱えるインフルエンサーだったと報じられています。

SNSでは、フォロワー数が多い人物ほど信頼されやすく、若者が警戒心を持ちにくい傾向があります。

特に家庭や学校に居場所を失った若者にとっては、「自分を受け入れてくれる存在」に映ることもあります。

その心理につけ込めば、人間関係そのものが支配の手段となってしまいます。

SNSは便利な道具ですが、その影響力が犯罪に利用される危険性も改めて認識する必要があります。

トー横問題は「場所」の問題ではない

「トー横」と聞くと、一つの場所だけの問題だと考えがちです。

しかし、本質は違います。

家庭で孤立し、学校でも居場所がなく、社会との接点を失った若者が集まり、そこで犯罪グループや悪意ある大人に狙われる。

同じような構図は全国各地で起こり得ます。

つまり、トー横は問題の原因ではなく、問題が表面化した象徴的な場所に過ぎません。

必要なのは厳罰化だけではない

もちろん、未成年者を利用した薬物犯罪や売春のあっせんは厳しく取り締まられるべきです。

一方で、取り締まりだけでは同じ事件は繰り返されます。

孤立した若者が安心して相談できる居場所づくりや、精神医療への適切なアクセス、家庭や学校だけでは支えきれない子どもを地域全体で支援する仕組みも欠かせません。

また、医療機関側でも、不自然な受診や薬の処方について情報共有や確認体制を強化することが、被害の防止につながる可能性があります。

おわりに

この事件で最も考えさせられるのは、少女たちが最初から犯罪に関わろうとしていたわけではないという点です。

依存を利用され、お金に困り、さらに売春へと追い込まれる。

そこには、一人の加害者だけでなく、孤立した若者を支えきれなかった社会の課題も映し出されています。

もちろん、犯罪の責任は加害者自身が負うべきです。しかし同時に、同じような被害者をこれ以上生まないためには、「なぜ若者がそのような環境に追い込まれたのか」という視点からも、この事件を考えていく必要があるのではないでしょうか。

薬を買う金がないなら「体を売って稼げ」少女に売春そそのかしたか…トー横・向精神薬転売容疑で逮捕の男:東京新聞デジタル
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